【イベントレポート】千歳公楽座 玉川奈々福 独演会

長崎市チトセピアホールでは自主事業として11月29日に「千歳公楽座 玉川奈々福 独演会」を開催しました。かつて街場にあった寄席のように縁者の息遣いまでもが伝わるような距離で演芸を堪能するというコンセプトで始まったこの会。今回ご出演いただくのは玉川奈々福さん。古典と新作ともに能くし、国内外を問わない幅広い活動で注目を集める奈々福さんは2019年の長崎初公演以来2年ぶり二度目のご出演。コロナ禍による2度の中止をはさみやっとの開催ということで期待も高まります。

この日の開口一番を務めるのは奈々福さんのお弟子さん、玉川奈みほさんで「塩原多助一代記 円次殺し」。2019年に入門、翌年に初舞台をふんだ奈みほさんによる実直な太助と愛馬・あおとの別れの場面は、ご本人の真摯な姿勢が重なるようで引き込まれました。

そしてお待ちかね、奈々福さんの登場です。

本来ならば客席からの「待ってました!」や「たっぷり!」、「日本一!」といったかけ声のやりとりが浪曲の楽しみでもあるのですが、そこは時節柄ということでメッセージを書いたウチワで応援するお客様もいらっしゃって、根強い人気を感じさせられます。

さて、一席目は新作「浪曲シンデレラ」。誰もが知ってる童話も奈々福さんの手にかかると抱腹絶倒の浪曲に。魔法が解ける午前0時の一刻を争うスピード感あふれるくだりは圧巻、そしてハッピーエンドに…と筋は知ってるはずなのに聞きながらハラハラドキドキ、話芸の魅力ってこれですよね。

今回の曲師は沢村美舟さん。前回ご出演の曲師・沢村豊子師匠に入門して7年目、奈々福さんの海外公演にも随行するなどキャリアを重ねているだけあって息もピッタリ。浪曲師の演じるさまを傍らでじっと見つめながら即興で合わせていく、この掛け合いの妙も浪曲の醍醐味です。

仲入り挟んで二席目は「掛川宿」。

左甚五郎と狩野探幽、ふたりの破天荒な老名人が掛川の本陣宿遠州屋で繰り広げるドタバタを、ときにチャーミングに、ときにユーモラスに演じるさまに会場は大いに沸く中、会はお開きとなりました。

【実施概要】
(日  時) 令和3年11月29日(月) 19時~21時
(主  催) 長崎市チトセピアホール 指定管理者 有限会社ステージサービス