長崎市チトセピアホールでは自主事業として「スガダイロートリオ 秋の西南ツアー2015」を11月19日に開催した。
毎年恒例の西南ツアーも今年で5年目。会場の客席天井部分からは天蓋が吊られ、その下に設えられたステージには照明に照らされたピアノ、ベース、ドラムが演奏される時を待つかのように鈍く光る。そしてステージを取り囲むように客席が配置された円形劇場スタイルで、いつものチトセピアホールとは全く異なる雰囲気の中、開演時間である7時を少し過ぎた頃、MCであるノイズ中村と高木健の賑々しい呼びこみによってスガダイロートリオが登場した。
スガダイロートリオの最新アルバム『GOLDEN FISH』のオープニングを飾る「黒坊主、参り候」からライブはスタート。力強く繰り返されるピアノのリフは会場の空気を震わせ天蓋はまるで生きているかのようにうねりはためき、曲の展開に合わせて変化する照明によりさらに表情を変える。
続いてエリック・ドルフィー「Fire Waltz」、「枯葉」と続くが、これらの有名曲もスガダイロートリオにかかると新たな印象を吹き込まれる。耳に馴染みのあるフレーズから始まるも、気づかぬうちにメロディーが、拍子が、リズムがめまぐるしくアレンジされ、これは果たしてスタンダードかオリジナルかと聴く者を不安にさせたかと思うと、するりと元のフレーズに着地させてみせる。この緊張と緩和のギャップこそがスガダイロートリオの魅力だろう。
そして第1部の最後は「A列車で行こう」。これもお馴染みのイントロからスタートしたかと思えば変奏、変奏、また変奏。それぞれのソロもたっぷりと披露して怒涛の第1部は終了。45分強とは思えないほどの密度と圧を感じる演奏だった。
20分ほどの休憩を挟み、再び登場したノイズ中村と高木健のMCに誘われてトリオが登場。動画サイトで話題の“はとぽっぽを歌うインコ”をiPhoneで再生し、それに合わせて演奏をするという変わった趣向から第2部は始まった。
ベースを務める東保光がボーカルをとった「寿限無」や、「小さい秋見つけた」(もちろん中田喜直作、の)、そして服部マサツグのドラムプレイを堪能できる「Golden Fish」、「時計遊戯」とたたみかけるようなプレイが続く。
アンコールは三たび登場のノイズ中村と高木健の両MCによるラップを交えた「珠算遊戯」でコンサートは終了。
終演後のロビーでライブを観に来てくれた知人と話した中で「“息を呑む演奏”ってよく言うけど、空気が本当に薄く感じたライブははじめて!」と熱っぽく語っていたのが印象的な夜だった。
(写真と文・出口亮太)
【実施概要】
(日 時) 平成27年11月19日(木) 19時~21時20分
(参加者数) 50名
(主 催) 長崎市チトセピアホール 指定管理者 有限会社ステージサービス