【イベントレポート】「させぼ文化マンス参加事業 桃源郷の秋祭り」

休日の午後、街を散歩していると公共ホールの方から太鼓の音が聞こえてくる。気になって近くまでいってみると、ホールの前の広場にはマルシェが催されていて、雑貨や古本、フードの屋台もあったりして人だかりが。そしてその中心では、DJがかけるレコードに合わせて大人から子どもまでが笑顔で輪になって踊っている―。

11月10日から11日にかけて行われたさせぼ文化マンス参加事業「桃源郷の秋祭り」では、日常的に見慣れたまちなかの劇場前広場がピースフルな空間に変わり素敵な時間が流れる、開かれた公共ホールの新しいあり方を示唆するようなイベントの数々が行われました。

させぼ文化マンスは市民の文化活動の振興と人材の育成を目的に佐世保市が主催する市民提案型公募事業で、今年で7回目の開催です。地元を中心に活動するDJチームであり企画集団の「桃源郷」は、アーティストの岸野雄一さんとDJの珍盤亭娯楽師匠を迎えアルカスSASEBO前の広場を会場としたDJ盆踊り、公共空間の有効活用をテーマにした特別講義、そしてレコードコンサートと蚤の市の複合イベントを「桃源郷の秋祭り」と題して提案、採択されて参加しました。
盛りだくさんで行われた「桃源郷の秋祭り」、二日間にわたるレポートです。
*長崎市チトセピアホール(指定管理者:(有)ステージサービス)は本事業に企画協力として桃源郷さんとコラボでの参加です。

■11月10日土曜日、秋晴れ。させぼ文化マンスの初日です。アルカス広場には、雑貨、陶器、古本、焼菓子など10を超える数のお店が集まりマルシェが立ちました。
お昼すぎには煮込みやおでん、たこ焼きなど食事を楽しむ人たちも集まってきて賑わいを見せます。なんとも居心地の良い空間、その雰囲気をつくりだすDJは、もちろん桃源郷オールスターズ。

17時からはエントランスホールでレコードコンサート「出張!チトセピアレコード大學」。2015年から長崎市のチトセピアホールで開催されてきた、館長の出口がゲストを迎え、お気に入りのレコードとお喋りを楽しむトークショーの出張版です。

今回は音楽家でDJでもある岸野雄一さんをゲストに、アナログレコードというメディアの楽しみ方をお話しいただきました。

トークショーが終わることにはすっかり日も暮れ、広場にはなんとも良い雰囲気の灯りの点いた提灯が。屋台を覗くとたくさんの人で賑わっていました。その様子を眺めながら、こういうふうに公共空間も活用すると街はもっと面白くなるな、と思えた夜でした。


■11日、文化マンス二日目。この日もお天気に恵まれました。昨日に続いて蚤の市も大盛況です。秋晴れの空のもと、岸野さんのエキゾDJが響き渡ります。

この日はもうひとりのゲストDJとして珍盤亭娯楽師匠も参加。鉄板のシティポップセットで早い時間から会場を沸かせます。

13時からは中会議室で岸野さんによる特別講義「あたらしい公共空間のつくりかた」。

文化庁メディア芸術祭大賞を受賞した「正しい数の数え方」や自身のユニット「ヒゲの未亡人」でヨーロッパツアーを行うなどグローバルに活躍する一方で、地元である墨田区押上を拠点にコンビニDJやDJ盆踊りなどローカルな活動も行う岸野さんから、地域との協働体制の築き方や巻き込み方、公共空間を使うときに気をつけないとならないこと、そして何より大事な公共の精神について、現場での活動を交えたリアルなお話をいただきました。

さて、2日に渡って開催されたさせぼ文化マンスもいよいよクライマックス。夕暮れが近づく頃には、広場の中央にお立ち台が置かれ、DJブースの側には和太鼓が。DJ盆踊りのスタートです。

「炭坑節」の基本的な振り付けのレクチャーからはじまり、その振り付けで昭和歌謡からJ-POPまで踊ってみるという試みに、会場には自然と踊りの輪が出来ていきます。そして、気づいたのは参加のハードルの程よいゆるさ。踊り疲れたら輪から外れてちょっと休憩、ちょっとビールとか飲んだりしてまた踊りたくなったら輪の中に‥、とみんなが自分のペースで踊れるのが盆踊りの魅力なんですね。

そして盆踊りで体もフロアも温まったところでトリの珍盤亭娯楽師匠のDJタイムのスタートです。日本全国を行脚しながら収集した古今東西の音頭を超絶スキルでつなぎながらマイクであおる唯一無二のスタイルに、ちょうど大ホールでのダンスイベントを終えた子どもたちも混じって大盛り上がりする中、二日間の「桃源郷の秋祭り」は幕を閉じました。

*当日の模様はInstagram公式アカウントにもアップされています!ぜひチェックしてみてください!!